台北方面から花蓮県に車で入ってくるには蘇花公路を通ります。蘇花公路は蘇澳と花蓮を結ぶ臨海道路で、日本統治時代の1924年から14年間かけて多くの犠牲者を出して完成した道です。当時は台湾の西部と東部を結ぶ唯一の陸上輸送ルートで、それ以前は物資の輸送はすべて海上ルートでおこなわれていました。戦後、それも1980年2月にようやく北廻り鉄道が開通するまでは、人も物資もここを行き来していたわけです。
台湾の東側は2000m級の高い山から太平洋に急に沈みこむ断崖が続いています。蘇花公路は、ザイルで絶壁を下り、発破をしかけてこの断崖の斜面を削って作られました。花蓮市から約37km、台北方面からは和平トンネルを過ぎたところから21kmにわたって、いくつもカーブした道路が半分空中につきだしたようになり、90度の切り立った崖と道路下の絶壁が重なり合っています。そのほとんど全てが片麻岩と大理石でトルコブルーの海に落ち込んでいる絶壁は地上の高度と同じ深さで海面下からでているといわれています。中でも台湾八景の一つにあげられている清水断崖は最高地点が海から800mあり、蘇花公路で最も美しい場所です。