布洛湾台地を下りて、上流方向にトンネルを抜けると峡谷はさらに狭くなります。燕子口です。それまでの片麻岩の峡谷から石灰岩地質の峡谷に変わります。ここは車両はトンネルを使用、歩行者は中部東西横貫公路の旧車道を散策できるようになっています。 歩道の対岸の岸壁には、たくさんのポットホールが見られます。これらのポットホールの形成過程は二種類考えられます。一つはかつて川底だったころに断層や節理などの比較的硬度の低い侵食されやすいところに窪みができ、そこにおこる渦巻き状の流れが小さな石などを転がして、次第に穴を大きくしていったあとに、地殻の隆起に伴って、現在の位置にあるもの。もう一つは地下水が岩層の中に溜まって飽和状態になったとき、岩の割れ目からしみ出し、水の浸食作用で穴が次第に大きくなっていったという説です。渓流の侵食でできたポットホールは口が上流方向を向き、地下水の侵食でできたポットホールは口が下流方向を向いています。 春から夏にかけて、ここをたくさんのツバメが風に乗って峡谷を飛ぶ姿がみられます。ツバメがこのポットホールに巣を作ると言い伝えられてきたため、燕子口という名前がつきました。しかし実際は雨をしのぐにはポットホールの穴は浅すぎ、湿っているのでツバメはポットホールには巣を作ることはありません。ツバメは、峡谷に発生する上昇気流に乗って空中に舞う昆虫を求めて、気圧の比較的低い雨の日や早朝、日暮れ前にここを飛び交うのです。足元に鳥の糞が落ちていたら上を見てみてください。ツバメの巣があるはずです。